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福岡地方裁判所 昭和24年(行)106号 判決

原告 和田正俊

被告 浮羽町大石地区農業委員会・福岡県農業委員会

一、主  文

被告浮羽町大石地区農業委員会が、昭和二十三年十二月十七日附を以て別紙物件目録表示の土地及び建物につき定めた買収計画、並びに、被告福岡県農業委員会が、昭和二十四年三月十二日附を以て原告に対してなした右買収計画に関する訴願棄却の裁決は、いずれもこれを取り消す。

訴訟費用は、被告両名の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、請求の原因として次のように述べた。

「(一)別紙物件目録表示の宅地及び同地上建物は、元来原告の所有にかかり、古くから原告の父母がここに居住していたものであるが、昭和九年頃から父の業務の関係で東京に移住したので、原告は、昭和十二年頃以降父母が帰郷するまで一時的に留守番として管理させる目的で、訴外重岡九郎右衛門にこれを貸与し、爾来同人が本件宅地及び建物を占有使用することとなつた。かような次第で、右貸借に際しては原告、重岡間に、後年原告の父母において老後帰郷隠棲のため本件宅地及び建物を必要とする事態に立ち到つた際は、直ちに重岡から原告にこれを返還する旨の口約が成立していたものであつて、賃料もわずか一箇年金三十円で、それも重岡からの申出により原告が受け取ることになつたものである。しかるにその後昭和二十年に至り、原告の父母は、いずれも齢七十に近く心身共に老衰し、東京での生活はますます困難の度を加えたので、やむなく意を決して帰郷することとしたから、原告は、重岡にこの旨を通じて同人との間の賃貸借契約を解約する旨の意思表示をなし、本件宅地及び建物の返還を求めたが、重岡は、容易にこれを肯んじないため、種々困難な折衝を重ねた結果、同年八月三十日に至りようやく右両名間に、明渡期限を向う三年後の昭和二十三年八月末日とし、賃料は従前どおり年三十円とする約束で、なお本件宅地及び建物の賃貸借を継続する旨の合意が成立した。

(二) しかも、その後原告の父母は、神経痛その他の病に罹る等の事情も加わり、ますます東京での生活が困難となつたため、原告は、昭和二十二年六月以降重岡の了解を得て本件建物の一部に入居させていた知人訴外泉隼人を介し、しばしば重岡に対し右期間満了後の賃貸借の更新を拒絶する旨通告して来た。よつて前示約定明渡期限の経過を以て本件賃貸借契約は消滅したから、原告は約旨に従い本件宅地及び建物の明渡を求めたところ重岡は、又もや言を左右にして明渡の義務を履行しないのみか、更にいわゆる農地改革に便乗して本件宅地及び建物を自己の手中に収めようと企て、昭和二十三年十一月自作農創設特別措置法(以下「自創法」と略称する。)第十五条に基き本件宅地及び建物の附帯買収の申請をした。

(三) ところが被告浮羽町大石地区農業委員会(当時の名称・大石村農地委員会)は、これを容れ同年十二月十七日、これらの物件がいずれも重岡の賃借物であり、同条第一項第二号に該当するものと認定して、これにつきいわゆる附帯買収計画を定めた。よつて原告は、被告に異議を申し立てたが、同月二十九日却下されたので、更に昭和二十四年一月二十四日被告福岡県農業委員会(当時の名称・福岡県農地委員会)に訴願したところ、同年三月十二日同被告は、右訴願を棄却する旨の裁決をなし、原告は、同年四月二十一日右裁決の告知を受けた。

(四) しかし、右附帯買収計画及びこれを是認した訴願棄却裁決には左記のような違法がある。

(1)  まず、本件附帯買収計画が、訴外重岡の買収申請により同人が本件宅地及び建物につき賃借権を有するとの事実認定に基いて定められたことは、前述のとおりである。しかるに、同訴外人の本件宅地及び建物に対する賃借権は、前記のように右買収計画樹立前である昭和二十三年八月末日の経過と共に消滅しており、本件宅地及び建物は、自創法第十五条第一項第二号所定の買収の要件を具備しないものであり、従つて、これらの物件について定められた本件附帯買収計画及びこれを是認した訴願棄却裁決は、もとより違法たるを免れない。

(2)  第二に、自創法第十五条に基く附帯買収手続が適法であるためには、附帯買収の対象たるべき農業用施設、水の使用に関する権利、立木、土地又は建物が、買収申請者において同法第三条により売渡を受けた農地に対し従属的関係に立つことを必要とする。しかるに、本件宅地及び建物が重岡の売渡を受けた農地に対しかかる関係に立つとは到底認め得ない。かりにかような従属的関係の存在を主張して本件宅地及び建物の買収申請をなすべき資格を有する者があるとしても、それは重岡ではなくて、原告がかつて本件宅地及び建物の近傍に所有していた農地の売渡を受けた馬田某、平田某等である。従つて、右資格を欠く重岡の買収申請に基いてなされた本件宅地及び建物の附帯買収手続の違法であることは、多言を要せずして明らかである。

(3)  更に、本件買収計画樹立に先立つてなされた被告大石地区農委の審議は、利害関係人たる原告の意見を徴しない一方的のものである。すなわち、右審議の行われた昭和二十三年十二月十六日の議事録には、「議事中原告の代理人として泉隼人を列席させ、同人に適時発言の機会を与えた」旨の記載があるが、同日午後四時頃右泉隼人が呼出を受けた時は、既に右議事の終了を見ていたというのが真実なのであるから、右議事録の記載は、全く虚構のものである。かかる不公正な審議に基いてなされた買収手続が違法であることは、いうまでもない。

(4)  最後に、本件附帯買収手続開始の前提たる訴外重岡の買収申請は、自創法施行規則第七条所定の適法な申請書を被告大石地区農委に提出しないでなされた不適法のものであるから、これに基く本件宅地及び建物に対する買収計画、並びに、右計画を是認した訴願棄却裁決も、違法であるといわなければならない。

(五) よつて、右違法の附帯買収計画及び訴願棄却裁決の取消を求めるため、本訴に及んだ。」(立証省略)

被告等指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として次のように述べた。

「(一) 別紙物件目録表示の宅地及び建物が従前から原告の所有に属していたこと、被告大石地区農委が、昭和二十三年十二月十七日訴外重岡九郎右衛門の買収申請に基き、右宅地及び建物がいずれも同人の賃借物であり、自創法第十五条第一項第二号に該当するものと認定して、これにつき附帯買収計画を定めたこと、原告が右計画を不服として同被告に異議を申し立てたところ、同月二十九日却下されたので、更に昭和二十四年一月二十四日被告県農委に訴願したが、同年三月十二日同被告において右訴願を棄却する旨の裁決をなし、且つ同年四月二十一日原告に対して右の旨を告知したことは、いずれもこれを認める。

(二) しかし、以下詳述するとおり右附帯買収計画及び訴願棄却裁決には、何等原告主張のような違法の廉は存しない。

(1)  まず本件宅地及び建物は、右買収計画樹立当時訴外重岡が賃借権に基き正当にこれを占有使用していたものである。

すなわち同人は、もと大石村大字高見字実森の自宅に居住していたが、昭和九年頃以降繰り返し原告から代理人田中八太郎等を介して、「原告の父母は、この度東京に移住することになり、今後絶対に当地には帰来しないが、今まで住んでいた本件居宅を空家にしておくと荒廃してしまうから、是非入居して貰いたい。」との申出があつたので、本件居宅及びその敷地は日当りがよく、農業経営上好適であると考え、昭和十四年八月五日わざわざ前記自宅を売却した上、原告から本件宅地及び建物を賃料年三十円の約束で借り受けることとした。右の次第であるから、重岡としては、決して原告主張のように単なる留守番の意味で原告から右物件を借り受けたものではなく、また、原告に対し、後年その父母において老後帰郷隠棲の必要を生じた場合、何時でも右賃借物件を返還する旨約したこともなかつた。更に右賃料も、重岡からの申出ではなく、前記原告代理人田中八太郎の意向のままに取り決められたものである。かようなわけで、原告の父母は、東京に移住した当初から毛頭帰郷の意図を有していなかつたに相違なく、重岡は、爾来数年間原告から直接にも間接にも本件宅地及び建物の明渡の交渉を受けたことはなかつた。

なお重岡は、昭和二十年八月三十日原告に対し、向う三年後の昭和二十三年八月末日までに前記賃借物件を返還すると約したことはない。もつとも重岡は、昭和二十年八月三十日原告の代理人石井久太から、「従前の口頭の契約では都合が悪いから書面による契約に改めたいが、今後三年毎に賃貸借契約を更新することとし、その他の条件は従前どおりという趣旨の一札を入れて貰いたい。」との申出を受け、「契約書」と題する書面(甲第二号証)を差し出されたので、文肓故その記載内容を詳かにしないが、大方右の趣旨のものであると信じてこれに押印したことはある。しかし右書面によるも約定の昭和二十三年八月三十一日は、通常の賃貸借存続期間の終期を示したに止まり、重岡は、同日までに必らず本件宅地及び建物を明け渡す義務を負つたものとは解せられない。

次に、昭和二十二年六月以降原告の知人泉隼人が重岡の了解を得て本件建物の一部に入居していることは、これを認めるが、重岡は、原告から右泉を介して本件宅地及び建物の賃貸借につき期間満了前更新拒絶の通知を受けたことはない。重岡は、本件係争前泉の家族に対し、再三食糧等を分与したこともあり、両名間には感情的対立すらなかつたのである。また重岡は、右期間満了と共に原告から本件賃借物件の明渡を求められたこともない。それというのも、原告とその父母は、現在東京都内に二戸の邸宅を所有し、また原告の父は、会社重役等の要職にあるものであつて、決して原告主張のようにその父母は、帰郷の必要に迫られているわけではないのである。

かような次第で原告、重岡間の本件宅地及び建物の賃貸借は、期間満了前更新拒絶の通知もなく、その後有効な解約の意思表示もなされていないから、本件附帯買収計画当時既に消滅していたとは解せられない。よつて、右賃貸借の消滅を前提として、右計画及びこれを肯認した本件訴願棄却裁決の違法を主張することは、失当である。

(2)  次に、原告は、本件宅地及び建物とその買収申請人たる重岡の売渡を受けた農地との従属的関係の不存在を云々して、本件附帯買収の違法を主張するが、かような従属的関係が、法律上附帯買収の適法要件をなすものとは解せられないから、右原告の主張は、理由のないものである。なお、本件宅地の位置、環境、並びに、本件建物の構造等を綜合し、これらの物件は、重岡の農業経営維持増進のため絶対必要であるといわなければならない。

(3)  更に、本件買収計画樹立前の被告大石地区農委の審議に際して、原告主張のごとき不公正の点があつた事実は、これを否認する。

(4)  最後に、重岡が被告大石地区農委に買収申請書を提出していないとの原告主張は、真実に反するもので、現に同被告の手許には、重岡の捺印作成にかかる適法な本件宅地及び建物の買収申請書が存在する。

(三) 以上要するに、被告大石地区農委の定めた本件宅地及び建物に対する附帯買収計画、並びに、右計画を肯認して被告県農委のなした訴願棄却裁決を違法として、これが取消を求める原告の本訴請求は、理由のないものである。」(立証省略)

三、理  由

別紙物件目録表示の宅地及び同地上建物が従前から原告の所有に属していたこと、被告大石地区農委が、昭和二十三年十二月十七日訴外重岡九郎右衛門の買収申請に基き、右宅地及び建物がいずれも同人の賃借物であり、自創法第十五条第一項第二号に該当するものと認定して、これにつき附帯買収計画を定めたこと、原告が右計画を不服として同被告に異議を申し立てたところ、同月二十九日却下されたので、更に昭和二十四年一月二十四日被告県農委に訴願したが、同年三月十二日同被告において右訴願を棄却する旨の裁決をなし、原告が同年四月二十一日右裁決の告知を受けたことは、いずれも当事者間に争いがない。

しかるところ原告は、右附帯買収計画樹立当時には既に買収申請者の重岡において本件宅地及び建物につき賃借権を有していなかつたから、これらの物件は自創法第十五条第一項第二号所定の買収の要件を具備せず、従つて、これを対象として進められた附帯買収計画は違法であると主張するので、以下この点について判断する。

原告が昭和十二、三年頃訴外重岡に対し本件宅地及び建物を賃料年三十円の約束で賃貸し、その後現在まで同訴外人においてこれを占有していること、右賃貸借には当初期間の定がなかつたが、昭和二十年八月三十日に至り、右両名間に一応この賃貸借の存続期間を昭和二十三年八月末日までとする旨の合意の成立を見たことは、当事者間に争いがない。しかるところ、本件賃貸借が一時使用の目的のため締結された事実は、これを認むべき確証がなく、かえつて右当事者間に争いのない事実によれば、ともかく右賃貸借が当初から前記約定存続期間末日まで約十年も継続したことが明らかであるし、しかも後記認定事実からして、本件賃貸借がその締結の当初から原告、重岡間において決して短年月後の解約が予想されていたものでないことを推認するに難くない。原告は昭和二十二年六月以降重岡に対し更新拒絶の通知をして来たから期間満了日である昭和二十三年八月末限り右契約は消滅したと主張し成立につき争いのない甲第六及び第七号証の各一、並びに、証人泉隼人の証言(第一回)によれば、原告は、右期間満了約九月前の昭和二十二年十一月頃訴外泉隼人を介して重岡に対し更新拒絶の通知をなし、更に右期間満了後昭和二十四年、同人を相手方として福岡地方裁判所吉井支部に本件建物の明渡訴訟を提起したことが認められるけれども、原告において右賃貸借の更新拒絶の通知により契約を消滅せしめるためには右更新拒絶の通知をなすにつき正当の事由ある場合でなければならないが其の事由を肯認すべき証拠がない。すなわち、前示甲第七号証の一、成立につき争いのない同第六号証の二、証人和田喜次郎(第一、二回)、同泉隼人(第一、二回)、同石井計一郎(第一回)の各証言、原告本人訊問の結果、並びに、乙第六号証の一乃至四、同第七号証の一乃至三及び現場(第一、二、三回)の各検証の結果を綜合すれば、本件宅地及び建物は、原告が十四歳まで生育したところであり、その附近は、原告の祖先以来の由緒ある地で祖先の墓もあり原告及びその父母は、現在事業上の理由で東京に移住しているが、その故郷として格別の愛着を感じ原告及びその父母は、老後を郷里で送らんとの所存であることが認められるけれども、一方、同人等において東京に移住したのが既に昭和九年頃であり、それ以来原告及びその父和田喜次郎の事業はかなりの成功を収め、現に原告の家族とその老父母において、それぞれ本件建物よりもはるかに居住性において優れ、文化的生活に適した居宅を所有し、そこに居住しており、東京移住十年余の間重岡等賃借人に対し本件宅地及び建物の明渡を求めたこともなく、現在も老後の隠棲場所としてこれを手許に保留しておきたい気持を有しているのはともかくとして、さしあたり直ちに帰郷したいと考えているわけでもないことを窺知するに足りる。それにひきかえ証人重岡九郎右衛門(第一、二回)及び同田中忠太の各証言並びに現場検証(第一、二、三回)の結果によれば、そもそも訴外重岡が本件宅地及び建物を賃借したのは、原告の側からの申出に基くものであり、同訴外人は、右宅地及び建物がその農業経営に至便であると考え、従来所有していた居宅及びその敷地を処分した上右申出に応じここに入居し、附近の田六反六畝の自作を唯一の収入源として生活し、さしあたり本件建物を措いて他に転居先の見込も有していないことが明らかであり、本件賃貸借物件を使用する必要度は、原告の側のそれよりはるかに大であるといわなければならない。

してみれば、原告主張の更新拒絶の意思表示は適法になされたものと認められないから其効力を生ずるに由なく、当初の賃貸借の期間満了日である昭和二十三年八月末に於て前賃貸借と同一条件を以て更に賃貸借をなしたものと看做されるから、本件附帯買収計画樹立当時重岡の本件宅地及び建物に対する賃借権がなお存続していたことは明らかであり、右賃借権の消滅を前提とし、右買収計画及びこれを是認した訴願棄却裁決を違法とする原告の論難は、理由のないものである。

次に原告は、本件宅地及び建物が買収申請者の重岡において自創法に基き売渡を受けた農地に対し従属的関係に立たないから、右宅地及び建物に対する附帯買収計画が違法であると主張するので以下この点につき判断を進める。

おもうに、自創法第十五条による宅地等の買収が、同法第三条による農地の売渡に附帯して行うべきことは法文上明白であるから、右宅地等を買収することができるのは、その宅地等が買収申請者の農業経営全般についてではなく、同法第三条により売渡を受けた農地の経営に必要な場合に限定されるものと解するを相当とする――最高裁判所第三小法廷昭和二十七年八月二十三日判決(最高裁判所判例集第六巻第八号七二三頁以下登載)参照――。しかるところ証人重岡九郎右衛門の証言並びに第一回乃至第三回各現場検証の結果によれば、本件建物は建坪約四十坪の平屋住家であつて、本件宅地は、東西約百三十八尺、南北約七十一尺のほぼ矩形の平坦地であり、その東北部分上に本件建物が存在するが、その建物の西側のかなり広い部分及び南側前庭の南半分は菜園であること、訴外重岡が昭和二十年十月二日附で自創法に基き売渡を受けた農地は大字高見所在の三筆の農地、すなわち(1)字西畑六百十八番地所在田一反四畝二十一歩、(2)字長畑千二百六十四番地所在田一反七畝五歩及び(3)字八田千七百二十二番地所在田一反一畝十三歩であつて、右(1)の農地は、本件宅地の西北最短直線距離十メートル余、農道経由で約六十メートル、(2)の農地は、本件宅地の西方約二百メートル徒歩約四分、(3)の農地は、本件宅地の南北約八百メートル、鉄道線路を隔てて徒歩約十五分の位置にあることが認められる。

そこで右認定事実に徴し重岡が売渡を受けた右三筆の農地の経営上本件宅地及び建物につきいわゆる附帯買収の要件を具えているかどうかについて判断すると、まず、本件宅地の西半分に該当する本件建物の西側に接する菜園の部分は、それ自体独立して耕作の用に供せられているもので、右売渡農地の経営上必要な宅地にあたらないことは明瞭である。しかしながら本件建物及びその敷地は前記売渡をうけた三筆(もつとも右(3)の田は本件宅地から隔つたところに位置するものではあるが)の農地の経営に必要な建物であり、右建物の南側前庭は、現況菜園の個所をも含めて右売渡農地よりの収穫物の乾燥場所等の目的のため必要なものであることが認められる。しかし前認定のとおり本件建物は原告の生家でありその附近に原告の先祖の墓があり、原告及びその父母は将来この地で老後を送りたい所存であること、右訴外重岡は賃料年三十円の定めで賃貸期間の定めなく本件建物を賃借していること、本件宅地及び建物の附帯買収は、これを全体として観察するとき、右建物西側の菜園を除外して考えても、前記売渡農地の規模と対比し、余りにもその経営に必要な限度を超えた過大に失し、これが買収は、所有者たる原告の利益を不当に害するものであること、以上諸般の事情を勘案するとき、右建物及びその南側の前庭を附帯買収することは自創法第十五条第一項にいう附帯買収を相当とする場合に該当しないものと認めるのが適法な措置といわねばならない。

してみれば、本件宅地及び建物は、自創法第十五条所定の附帯買収の要件を欠くものと断じなければならない。よつて、これらの物件に対してなされた被告大石地区農委の附帯買収計画、並びに、これを是認した被告県農委の訴願棄却裁決は違法であり、これが取消を求める原告の請求は、爾余の争点に対する判断を俟つまでもなく正当であるからこれを認容することとし、なお、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鹿島重夫 大江健次郎 戸根住夫)

(目録省略)

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